20. "八方尾根〜唐松岳〜五竜岳〜鹿島槍ケ岳〜爺ケ岳縦走”
〜 途中断念なるも、悔いのない'05年夏山 〜
あなたは
人目のお客さんです
◆ 待望の北ア唐松岳〜五竜岳〜鹿島槍ケ岳〜爺ケ岳縦走に挑戦
今夏目指した鹿島槍ケ岳〜爺ケ岳の眺望ー五竜岳山頂から
我が山仲間恒例の夏の縦走登山は、北ア唐松岳〜五竜岳〜鹿島槍ケ岳〜爺ケ岳の縦走だった。
還暦も4年を経過、体力的にもこのコースはこれが最後となろうと期待の挑戦だった。2泊3日の日程で、8月8日早朝長岡を出発した。メンバーは4人。天候は、3日間まずまずの予報でまずは心配なし。勇躍、期待をもっての出発であった。 コースと日程は、(第一日目)八方尾根ゴンドラリフトー唐松岳ー五竜山荘(泊) (第二日目)五竜山荘ー五竜岳ー鹿島槍ケ岳ー冷池山荘(泊) (第三日目)冷池山荘ー爺ケ岳ー扇沢 の予定であった。
◆ ゴンドラで一挙に1800M、お花畑へ
長岡を朝5時に発った車は、八方尾根リフト前に7時30分には着いていた。
すでにリフト乗り場には列ができていた。さっそくリフトに乗り込む。還暦半ばの足の衰えの隠せない軟弱者にはやむをえない手段だ。さわやかな夏の朝風を受け一気に山上を目指すのも悪くはない。15分もしないで、一気に1800M地点まで運び上げられた。そこは、夏の高山植物の咲くお花畑だった。花をめでる登山観光客で一杯だった。
シモツケソウ・八方池附近
コバオケイソウ・八方池附近
◆ 澄んだ青空、湧き上がる白い夏雲
前方は白馬岳〜鑓ケ岳〜不帰キレット〜唐松岳の縦走コース
八方尾根から唐松岳へのコースは、喬木もない眺望のすばらしい尾根道で、岩肌に咲く花を観賞しながらの楽しいコースだ。
2,000Mの山上。天空は真っ青な空、真正面には、右から北の白馬岳〜鑓ケ岳、そして南の唐松岳へとつながる縦走路が構えている。中でも真正面に、険しい不帰キレットを望み、その山頂一帯に白雲が湧き上がる眺めは何ともいえない。
正面は不帰キレット モイワシャジン(?)
◆ 唐松岳山頂に立つ
八方尾根からのんびりした足取りで尾根を散策。唐松岳頂上山荘へ11時過ぎに到着。唐松岳山頂から一望のパノラマを満喫することができた。3年前、白馬岳〜旭岳〜清水岳〜不帰岳〜百貫山を経て祖母谷温泉に下った時、祖母谷から唐松岳に通ずるコースのあることを知り、いつかは唐松岳へ来ることを一人夢想したことを思い出し、眼前を西に長く伸びてるこのコースがその道だったのかと勝手に納得した。
◆ 唐松岳を越え五竜山荘にて一夜
唐松岳を越えると多少の鎖場とアップダウンが続いた後、そう苦労もなく2時間ちょっとで五竜山荘へ到着した。今夜の宿、五竜山荘だ。周りには小さなお花畑に可憐な花々が迎えてくれていた。
五竜山荘の周りで可憐に咲くクルマユリ
午後3時、早々に五竜山荘に入ってまずは冷たい缶ビールで乾杯。枯れるほどにかいた汗を補充するごとく、しみわたるようなのどごしが心地よい。 平日の山小屋泊まりで、少ないと思っていた泊まり客が時間とともに増え窮屈なスペースとなってしまった。中高年女性団体の賑やかさと、締め切った部屋の熱つ苦しさで眠れぬ長い一夜になってしまった。明日の五竜岳〜鹿島槍〜冷池山荘までの長丁場に支障がなければいいのだが………。
◆ 突然のリーダーのアクシデント!
朝4時前から周りの動きがあわただしくなった。ご来光に臨む人の動きのようだ。夜半にかなりの雨があったようだったが、この人の動きで本日の行動には支障のない天候と判断し安心した。 今日の行動は、目の前の五竜岳をまず越え、岩場ルートの八峰キレット、北峰、南峰そして鹿島槍ケ岳、冷池小屋までの長丁場で、小生にとってはかなりの難コースだ。 5時、4人そろってまず五竜岳山頂を目指して出発した。天候も上々、目の前に聳える五竜岳の岩峰が朝日に輝いて見事だ。
ところが小屋を出て20分、順調に進んでいたはずの我がパーテイに思わぬアクシデントが発生した。先頭を進んでいたリーダーのM君が、突然意識を失いその場にバッタリ倒れ込むアクシデントであった。一瞬何が起こったのか理解できなかったが、そのままなかなか立ち上がれないのを見て、一同重大な事故の発生であることを悟った。後続の二人が駆け寄ってザックを解いて安静にするとともに、一番後方にいた小生がまずは山小屋へ急報のため飛んで返した。幸い、出発して間もなくだったこともあり、山小屋には直ぐ到達、この一報で直ちに救援態勢を整えてくれてありがたかった。
(右写真)この直後にアクシンデントが起きた
◆ 救援の手を煩わせず、自力歩行で小屋へ
小屋の人たちが救援の準備をしている間も、彼がどうなっただろうか気が気でなかった。我がリーダーは、30年以上のベテランで、若い時から厳冬期でも山にこもり、また遭難事故の救援も何度か経験し頼れるリーダーであった。ところが近年、心臓に障害が発見され治療の身であることをみんなで知っていたのである。一刻も早い救援が必要だった。 準備が整え二人の救助隊といざ現場に急行と、スタートしようとした時、向かう先の方で仲間が手で合図を送ってきて、真ん中にM君を挟んでゆっくり小屋に向かってくるのが認められた。意識が戻ったようだ。しかも、ゆっくりではあるが自力で歩行している。万歳!とにかく命には別状なかったようでホットした。 救助隊の手を煩わせることなく、しかも自力で小屋まで辿りつくことができ、一同ひとまず胸をなでおろすことができた。
◆ 一命を幸運に救われたできごと
当面は事なきを得た。倒れた時、頭から落ち額を岩に打っていた。小屋に戻って再び発作の起きる心配も無い様子なので、とりあえず小屋で応急処置を受け、暫らく安静にして様子を見ることとした。同時に一同、この先の行程は即座に中止と決した。当然のことだった。 考えて見れば、不幸なできごとだったが、中に幸運もあったことが見逃せない。事故は、小屋を出てまもないできごとだったこと、険峻な岩場にとりかかる直前の、比較的ゆるやかな斜面であったことなど……。もう10分後のできごとなら、五竜岳山頂にかかる岩場だ。そのまま転落の危機に違いなかったはず。まさに一命を取りとめたできごとであった。ましてや五竜岳山頂越え、いよいよ岩場と鎖場の連なる鹿島槍への縦走路のど真ん中だったら、連絡もならず、行くも引くもお手上げだったに違いない。
◆ 縦走断念も悔いはなし
結局は、暫らくの静養の後、本人の意志と状態を慎重に判断し、最短の遠見尾根コースをとってその日のうちに下山することにした。 薄情な感じもしたが暫らく安静にしているM君を小屋に残し、折角の機会にと残る3人で、眼前に聳える五竜岳山頂を目指すこととした。山頂では360度のパノラマを十分満喫。目の前から遠くへと続く鹿島槍ケ岳〜爺ケ岳の予定コースを脳裏に焼きつけ帰路につく。 昼前、安静を続けたM君を伴い、遠見尾根コースを辿って無事下山することができた。突然のアクシデントで、自分にとって懸案の縦走は途中断念となってしまったが、仲間の命が幸運にも助かった山行きに何の悔いはない。 帰ったM君は早速病院の診察を受けた結果、やっぱり恐れていた持病の再来で、しかも「心室細動」という非常に危険な疾患であることが判明。治療に専念とあいなった。早い復帰を願わずにいられない。 こうして短い我が今年の夏山は終了した。今年も山でのいくつかの新しい出会い、多くの語らいがあった。おいしいお酒も堪能できた。何よりなのは、還暦半ばを通過中で、まだ山への意欲が消えないことだ。そろそろ涼しい秋の山が誘いはじめている……。いざ。
トップページへ
一 つ 前 へ-(私のたどった山と花旅ー4)
3>
次 へ